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【ぴあ×オフィシャルパートナー】#3 株式会社梓設計(前編)

「日常的に地域に貢献できるアリーナ・スタジアムなのかどうか」

株式会社梓設計
常務執行役員 スポーツ・エンターテインメントドメイン ドメイン長 プリンシパルアーキテクト
永廣正邦氏

2021.05.24

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「ぴあスポーツビジネスプログラム」(以下PSB)は、株式会社梓設計とパートナーシップ契約を締結。スポーツビジネスにおける人財強化を目的として、今後のPSBの取り組みの中で、株式会社梓設計によるスタジアムビジネスの講義実施、スタジアム見学ツアーなどの課外プログラムも予定しています。

株式会社梓設計は、昨年7月に開業した、ぴあ運営のイベント会場「ぴあアリーナMM」のCM業務(設計・コスト確認、工事監理・監修)を担当。

――永廣さんの業務について教えてください。
弊社には「交通インフラ」「ワークプレイス」など6つのドメインがあり、私はその中の1つ「スポーツ・エンターテインメント」ドメインを担当しています。スポーツ施設の実績だけで言うと、業界では一応ナンバーワンではありますが、そのことに甘んじず、5、6年前くらいからは海外施設などを通じて、日本におけるスポーツ・エンタメ施設の在り方の研究も積極的に行っています。

――梓設計はどのような会社ですか?
わりと意見は通りやすいというか、風通しはいいんじゃないかと思います。上から「こうしなさい」と言うようなことはあまりなく、やるなら自分の責任で。建築家としてやっていく以上、やっぱり自分の意見を持って、芯がないと。年齢は関係ありません。自らやる気を持ってほしいと思ってこれまでやってきましたが、みんな驚くほど伸びてきましたね。

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梓設計社内に展示されている本社オフィスの模型

――これまでの永廣さんとスポーツの関わりとは。
九州出身なんですが、テレビではジャイアンツ戦しかやっていなかったので、子どもの頃はジャイアンツしかいないのかと思っていました(笑)。なのでジャイアンツの試合は結構観に行きましたね。今は野球だけではなく、サッカーやバスケなどスポーツ観戦は大好きです。

仕事では最初スポーツとの関わりは全くなく、それが逆によかったです。入社時は博物館、学校、市役所など、コミュニティ施設やコミュニティゾーンを担当していましたので、「人が集まるためにはどうしたらいいか」と考えてきた経験が今活きています。

――現在、スポーツ・エンタメ施設を作る上での課題はありますか。
ふと考えてみると、いわゆる日本のスタジアム・アリーナのような大規模集客施設は本当に活かされているのかな、と。特に都心部にあるスタジアム・アリーナは、どこまでエンタテインメントとして収益を挙げられるのか、どのくらい近隣住民の皆さんが楽しめているのかと考えると、そうではない部分があるんですよね。それに気づいたのは今回の東京五輪で、僕らも参画させてもらい、海外の視察を重ねて、「あれ、ちょっと違うな」と。「やっぱり違うよ」と気付きました。

設計は、与条件をクリアすれば仕事になるという、単純な構図なのですが、まさしくそれが問題だったわけですね。全部が全部じゃないですが、負の遺産となってしまっている部分は僕らとしても責任を持たないといけないという罪悪感があります。やっぱり創るからには社会のためにやらなきゃいけない。特に設計の段階でちゃんとやっていかないとダメなんですね。

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里山スタジアム”をコンセプトにしたFC今治の新スタジアム。2023年開業予定。

――海外視察を通じて得たことは。
民間の会社が自分たちのクラブチームのためにアリーナ・スタジアムを建てているので、楽しめる施設というコンセプトは根底にありつつ、先を見越して、いかに稼げるかということが非常に考えられています。アリーナなんかは転換が非常に早いんですよ。1日でバスケやって音楽やってまたバスケみたいな。「社会貢献」「楽しめる施設」「利益」がとてもリンクしていますね。

例えば、オーストリア・ウィーンのサッカークラブ・SKラピード・ウィーンのスタジアム「アリアンツ・シュターディオン」は、ラウンジがとても充実していました。家族連れが食事を楽しんで、試合が始まるとバーッと観に行ってまたラウンジに戻ってくるんですよね。規模も2万人くらいで、これは日本にもピッタリだなと。ほかにもフランスの「Uアリーナ」やアメリカの「アバイア・スタジアム」なんかもすごくいいんですよね。日本で応用できるスタジアムもいくつかありました。

――今後、日本のあるべきアリーナ・スタジアムとは。
エンタメ施設として、ホスピタリティやワクワク感、また来たいと思ってもらうことは当然で、最近プラスαで考えているのは、コロナ禍によってバーチャルとリアルのハイブリッド化が求められてきたので、まずそのための配信設備を兼ね備えなければいけないと思っています。あとひとつ、強く考えているのは、コロナ禍も含めて、地域交流拠点として日常的にその施設が地域に貢献できるかどうかです。例えばコンコースがどれだけ使えるか、みんなが集まる場所があるかどうかを加味してあげたい。

例えば今、FC今治のスタジアムを手掛けていますが、そこにはまさに365日にぎわう施設として、日常的に人が集まる多様性ある「里山」を作ろうとしてます。“日頃からみんなが集まる場所”=“収益も落とせる施設”として、サッカーをやるときはサッカー、やらないときには別のイベントができたり、いつでもみんなが集まれる場所。そういう居場所を今後はどんどん地方に作っていきたいです。

実は「第4回スポーツファシリティーズ大賞」にて、弊社が設計及び施工監理をした「釜石鵜住居復興スタジアム」がスポーツ庁長官賞をいただいたんですが、ここはまさに“完全公園化”したスタジアムです。まったくフェンスがなくて、ピッチに誰でも入れるんですよ。おじいちゃん、おばあちゃんが休日にゲートボールやってるんです、ワールドカップもできるラグビーのピッチで(笑)。日常と非日常の両軸で稼働するスタジアムが、もう地方で現実にできているんです。

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豊かな景観と共生した公園と一体となった釜石鵜住居復興スタジアム

PROFILE
永廣正邦
株式会社梓設計
常務執行役員 スポーツ・エンターテインメントドメイン ドメイン長 プリンシパルアーキテクト

1960年熊本生まれ。1984年法政大学工学部建築学科卒業。
1989年(株)梓設計入社。横浜Kアリーナ、釜石スタジアムなどスタジアム・アリーナの設計のほか、TOTOミュージアム、山梨市庁舎など数々の設計に従事。

株式会社梓設計公式サイト
株式会社梓設計公式Instagram

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